おすすめの写真集①
「どうやったら写真がうまくなりますか?」
たまにこう聞かれると焦ってしまう。
なんて難しい質問なんだ!
「では、一丁カメラを置いてみてはいかが?」
なんて答えたりしています。
聞いた人はきっと釈然としないはずです(笑)
例えば花火とか工場夜景とか水族館とか、
セオリーとしてこう撮るといいよ、と
ネットや写真教則本にはHow Toが記されてます。
花火なら、Mモード、ISO100/絞りf11/SS BULB
この設定で撮ると綺麗に撮れるから安心です。
確かにこれは正解なのだけど、
そもそも「どんな写真を撮りたいか?」を
想像する楽しさが、抜け落ちてる気がします。
ゲームの攻略本を見ながらプレイしたら、
ちゃんとゲームクリアできちゃう感じ。
例えば、三脚を花火と逆側に振ると
花火を見る人々の顔は輝いてるはずだし、
花火を打ち上げる職人のおっちゃんや消防士は
激アツな被写体なはずだ。
(撮影可能かどうかは別として)
被写体に対峙した時どう撮る考えることも、
写真の醍醐味なんじゃないかなと思うのです。
要は誰かが決めた正解ではなく、
自分の中に正解を持つこと。
ぼくはそういう写真に感動します。
では、そもそも「いい写真」ってなんでしょうか。
心に響く写真?正しく情報が伝わる写真?
愛情ある写真?かわいく撮れてる写真?
目的や、扱う人によって
「いい写真」の概念は変わります。
例えば目つぶりでも、WBが正しくとれてなくても、
ブレてもピンぼけでも「いい写真」はある。
面白いのは、スキルや知識があることと
「いい写真」はイコールじゃないってこと。
カメラの扱いを知らない、おばあちゃんやこどもでも、
プロ顔負けの写真が撮れたりする。
先日生徒さんが教えてくれた
大阪のNPO団体が運営するwebサイト↓
カメラマンはホームレスのおっちゃんたち。
彼らに写ルンですを渡し、写真を撮ってきてもらい
その写真を販売するという取り組みのようです。
おっちゃんたちはきっと写真の素人だ。
でも、この写真をセレクトしている人は
写真を知っている人(見る力のある人)ですね。
「いい写真」を判断できるようになるには、
見る(インプットする)力が必要です。
写真の歴史を学び、建築・美術に触れ、
恋をしたり、映画や本を読んだり、
価値観を共有し、美しい風景に出会うこと。
そういった人間の基本的な、
本質的な部分を磨くこと。
思考や体験を重ね、感覚を研ぎ澄ませるによって
見る力は一層、深化してゆくと思います。
面白い人の写真はユニークだし、
センスのよい人の写真はかっこいいし、
思考の浅い人の写真はどうしたって薄っぺらくなる。
写真は嘘をつけない。
それで、冒頭の文章につながります。
いい写真を撮りたいなら答えはカメラの外側にある。
誰でも綺麗に?撮れる時代だからこそ、
写真の良し悪しは、シンプルな人間力勝負になる。
「誰が撮ったか」が重要なのです。
オリジナルの特徴やキャラクター、思想、
価値観を持つ人が写真家です。
誰でも扱えるカメラで生計を立てる。
写真家という職業の凄み。
僕は、写真家をとても尊敬しています。
<ヴォルフガング・ティルマンス>
前置きが長くなったけど、今日のテーマは
みなさんにご紹介したい写真集の話。
コンセプトやテーマ、思考を深く掘り下げ、
時間とお金と、時には命をかけて
写真家たちが制作したものが写真集です。
幸運なことに私たちは「写真家たちの目」を
手元におくことができるのです。
僕も、若い頃はご多分にもれず、
森山大道や藤代冥砂、浅田政志、佐内正史に憧れ、
今も好きな写真家はたくさんいますが、
久しぶりに心臓を撃ち抜かれた写真家がいます。
いまさらですが、僕は奈良原一高に夢中です。
様々なシリーズの中でも、肖像写真が特に好きです。
↑島根県立美術館での写真展で衝撃を受け、
「時空の鏡」という写真集を手に入れたのですが、
星新一さんを撮影した組写真↓痺れました。
MEMORIの写真集コレクションにあるので、
興味がある人はぜひご覧ください。
みなさんは好きな写真家、いらっしゃいますか?
そんなお話を山ほどしたい、今日この頃。
明日、写交場「スナックピンぼけ」で♡
長話にお付き合いいただき、
ありがとうございました。
それでは、また来週。